2012年07月17日

雨、男と女、そして・・・

オレは少し酔っていた。
珍しく稽古後に一杯やったからだ。
夜の街の湿気った空気がオレを包む。
ああ。梅雨だぜ。

オレはいつものように無意味にうすら笑いを浮かべると、家というの名の安息地を求め、電車という名の戦場に乗り込んだ。
そうさ、0時をまわった電車はいつも戦場さ。
それがたとえ西武線だって戦場さ。
田舎電車を馬鹿にしちゃいけないぜ、お嬢さん。
でも今日は、


案外空いてた。


空いてるんだったら座っちゃうぜ。
いいのかい?ベイビー。座っちゃうんだぜ?


「よっこらせーのせ」


中年だぜ。

オレはケータイを取り出すとメールやツイッターをチェックし始める。
かわいい子猫ちゃんから連絡があるかもしれないからな。
オレってやつは罪な男さ。


なんの連絡もなかった。


ふっ。
オレはいつだって自由なのさ。大空を駆け巡る鳥なのさ。
寂しさと悲しさと効きすぎたエアコンの風がオレを縮みこませやがる。
そんな時、その女は現れた。
長い茶髪。明るめの赤が基調の派手な服装。歳は20代半ば。
そして、
電車内でガチ電話中。

出会いなんてこんなもんさ。
全てが理想どおりなんてないのさ。

女はぎゃはぎゃは笑いながらオレの隣に座った。
発車のベルがなる。


なぁ。


なーぁ。


なぁっておい。


お前いつ電話切るんだよ!


ふっ。
いや、いいのさ。
悪くない。
TOKIOの自由ってそんなもんだろ?
いいじゃないか自分勝手。
サイコーさ。
オレはレィディには滅多なことではキレたりしないぜ。

女は発車して数分後に電話を切った。

そうだろう?
キミは何も悪くないのさ。
悪いのはケータイさ。

女は壮絶に船を漕ぎ始めた。

人は誰もが旅人。
船を漕いで明日という大海原に旅立つのさ。
疲れていたんだね。ゆっくりお休み。
ただ一つだけ警告しておくぜ。
「寝過ごすなよ」

女はオレの肩を枕がわりにし始めた。

おいおい、お嬢さん、オレがいくらダンディガイだからってそいつは甘えすぎなんじゃないかい?
ふっ。
まぁいいさ。
オレのなで肩だったらいくらでも使いなよ。甘えんぼガール。
悪い気分はしないさ。
オレは中年だからな。
中年のおっさんはガールには優しいんだぜ。
そうさ、スケベ根性ってやつさ。

そうこうしている間にオレも眠りに落ちた。
深い。深い眠りさ。
くだらない人生なんか忘れてしまうくらいにね。

どれくらいたったのだろう。ガサッという女の振動で目が覚めた。

は?え?どうしたんすか?え?え?ここどこ?どこ駅?え?オレ、寝過ごした?え?どこどこ?
おっと。
オレとしたことが取り乱したぜ。
降りる駅の一つ前じゃないか。
計算どおりさ。

女は飛び起きると足早に電車を降りた。

そうかいそうかい。
よかったな。
ひと桁の足し算と降車駅は間違えちゃいけないぜ。
ベイビー、お前とのこの十数分間、楽しかったよ。忘れやしないぜ。
甘い余韻を残して女は去っていった。
オレはその余韻を確かめるため彼女が座っていた場所に目をやった。
何かが落ちている。

定期券だった。

Oh!
忘れ物だぜ!ガール!
定期券忘れたら明日泣くことなるぜ!
涙は君には似合わないぜ。

オレは定期券を拾うと、彼女を追い、電車を降りた。
オレと女を降ろした電車はすぐさま身軽に駅を出た。
「ひと駅くらい歩けばいいのさ」
オレはガッツリ後悔しながらも強がりを吐く。
男には少々のやせ我慢が必要なのさ。

女を追うオレ。
女はエスカレーターでホームを下り、駅出口に向かっていた。
出られないぜ、出られないのさ、お嬢さん。
なぜならキミの定期券はこのオレの手の中にあるからさ。

ヨタヨタと走りオレは女に追いつく。
そして女の肩をたたいた。

女はひどく怪訝な顔でこちらを振り向いた。

ああ。
いいね。
その不審者を見る目。
そうさ、TOKIOでは人なんか信じちゃいけないからな。
でもさ、ガール。
オレは違うんだぜ。
オレはドギマギした態度で自分の不審度アップさせると、定期券を差し出し、女にこう言ってやった。


「あのぅ、ケータイ忘れてませんか?」


オウップス!

オレとしたことが。
緊張しすぎたあまり「定期券」を「ケータイ」って言っちまった。
カッコつかない。それは取り返しようもなくカッコつかないぜ、オレ。

女は声も出なかったようだ。
それでもオレにはハッキリ聞こえたぜ。キミの心の中の「はぁ(゚Д゚)?」という叫びが。
数秒の間。
いや、そんなに長くはなかったのだろう、それでもオレには永遠に思える時間だった。

女はオレの手の定期券を見て全てを察したようだ。

「あ、ありがとうございます!」
女は微笑んだ。

そうそれさ。
女は愛嬌だぜ。
いつだって微笑んでなきゃな。
オレはお前のそんな笑顔が見たかった。ただそれだけなのさ。
決して、

「げへへ。定期券をきっかけに恋の花咲くこともあるぅー。なんつてー。げへへー。」

なんて思っちゃいなかったぜ。
ホントだぜ。
本当にホントだぜ。
ホントに本当にホントだぜ。
嘘じゃないぜ。
うん。うん。うん。そうなんだぜ。そんなんだよ。そうなんですよ。

女はつづけた。
「え?電車降りちゃって大丈夫なんですか?」

気遣い。
人の心を震わすもの。
そして決して忘れてはいけないもの。
ベイビー、キミにもあるんじゃないか、気遣い。
それなら電車内で電話すんのはやめなよ。
そうしたら、抱いてやってもいいぜ。

「あ、全然へーきっす。あ、どもども」

オレは自分でも驚くくらいに軽薄に答えた。
ふっ。
これも気遣いってやつさ。
たぶん。
うん。きっと。
緊張?
ふっ。そうかもな。
とにかく。
お嬢さん、君の笑顔が見れたならオレはひと駅でもふた駅でも歩いて帰れるのさ。

意味もなく恥ずかしくなったオレは、タタタタタと奇妙な早歩きで改札を抜けた。


雨が降っていた。
雨が街を潤していた。
そして今、オレの心は人間の優しい触れあいに潤されていた。
なあ。
うまいこと言ってねえか、オレ。

ことの次第をケータイでつぶやきながらオレは街を歩く。
そしてはたと気づいた。



おい待て!

さっきの電車、終電じゃねーじゃん!

ホーム戻って待ってたら次の電車来たんじゃん!!



オーマイガッ!
オレは叫んだ、心の中で。
いや、ちょっと声に出した。

でもちょっと思った。

このネタ、オチがちゃんとできた。

ってな。



(´Д`;)(;´Д`)(´Д`;)(;´Д`)(´Д`;)(;´Д`)

以上です。
以上が、皆様お忘れかもしれませんが、先日ツイート途中で寝落ちした、アレです。
そのまんま書いてもアレなんでちょっと脚色してますがノンフィクションです。

あーあ。残念だね。チャンチャン。
posted by ししゃも at 04:03| Comment(4) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
つくづく残念な人ですね(笑)。
Posted by うっちー at 2012年07月17日 18:29
いい読み物でしたw
Posted by 金太郎 at 2012年07月18日 01:23
>ウチー
いけませんか?

>三平さん
深夜に努力しましたの。ご覧いただき誠にありがとうございます。
Posted by ししゃも at 2012年07月18日 09:19
いいんじゃないでしょうか(笑)
Posted by うっちー at 2012年07月18日 09:51

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